Herbie Hancock "Speak Like A Child"

昔、仕事が終わるのはだいたい深夜。

山の手線の最終午前1時半ごろ、大行列の駅前タクシー乗り場に並ぶぐらいなら、と歩いて家へ帰ることもときどきあった。

休みの日は、コーヒーを淹れて、ランチのデリバリーをとって、グリーンに囲まれ、好きな音楽をかけたりして、のんびりとした時間を過ごした。

いまでもジャズを聴くと、静かな部屋に響いて満ちるピアノの音と、あのころの気楽さとさみしさ、陽光の明るさ、がよみがえることがある。

ジャズを聴いてる間に、ふと目が覚めて、本当はあの部屋でうたたねしていただけで、今の暮らしが夢だったらどうしよう、と一瞬想像しただけでぞっとした。小さな自転車に乗って並木道を出かける、あのときの暮らしは楽しくて好きだったけど、もう戻りたくはない。仕事だらけの気ままな生活は十分やりきった。運命の輪の小さな突起をぎりぎり渡りながら、ここまでやってきた。

Herbie Hancockのアルバム"Speak Like A Child"は何度聴いたかわからない。ロマンチックなアルバムジャケットと、表題曲がすごく好きだった。

Speak Like a Child by HERBIE HANCOCK (2015-09-30)